【会計】税効果会計における「重要な税務上の欠損金」の考え方(難易度:少し細かい)
2017年06月12日やはりこういった会計基準の話になると、税効果会計に限らず、かなりの自信とプライドを持っています。
今回は、少し前に、某大手監査法人の主査が間違った見解を持っていたため、そういう人が今は多いのかな・・と少し気になったので、正しく解説しておきたいと思います。
(税効果会計とは何か、といったところは次回に簡単に解説します。)
さて、「税務上の重要な欠損金」の考え方です。
これは、税効果会計を行う上で、最も重要なポイントの一つである繰延税金資産の回収可能性を判断する際の「会社分類」の検討で登場します。
この「会社分類」の考え方ひとつで、繰延税金資産の金額はかなり大きく動くので重要です。
そして、課税所得のマイナス、すなわち税務上の欠損となるのか、あるいは過去にそうであるのか、またそれが「重要な税務上の欠損金」なのか、という判断で「会社分類」が変わってしまいます。
そこで今回は、この「重要な税務上の欠損金」の「重要な」の部分にスポットを当ててきちんと解説しておきます。
まず、びっくりしたのは、とある監査法人の会計士がこの「重要な税務上の欠損金」の説明を以下のようにしたことです。
「重要な税務上の欠損金をどうとるかは会社側のポリシーによりますが、一般的に年商の一ヵ月分や総資産の1%等が指標になる」
・・・これ、全然違うと思います。監査において許容できる監査上の重要性の基準値と混同しているのでしょう。会計基準を誤解しています。
ここで声を大きくして言いたいのは、「重要な」の考え方は、質的重要性と量的重要性の両面を考えるということです。
(質的重要性)
例えば、売上高が10億円の会社があったとして、その年度の課税所得がマイナス10万円だったとしましょう。金額的な重要性だけでみれば、これは「重要」ではないといいそうですね。たったのマイナス10万円ですから。
しかし、昨年までの課税所得の平均がプラス1億円だった会社が、当期末に予想に反して売上高の減少により、予想よりブレも大きくマイナス10万円にでもなったとします。
たったのマイナス10万円ですが、下げ幅からみると「質的に重要」となり、重要な税務上の欠損金ではないかと検討にあがるでしょう。
すなわち、課税所得を生み出す収益力そのものの低下かどうかなど質の面からも判断しないといけない、ということです。
(量的重要性)
また、先の会計士は、金額的重要性についても考え方が違いますね。
正しい考え方は、例えば以下のようなものです。
①税務上の欠損金の金額が、翌1年で獲得できる課税所得の金額予想の範囲内などであれば、量的には重要と判断しないとする考え方。
②適用指針で「重要な税務上の欠損金が生じている」というように、わざわざフローの書き方をしていることから、過去数年、および当期の課税所得または欠損金を累積した金額で、欠損金が生じなかった場合の累積値と比較して何%下落しているか(例えば50%以上下落など)といった考え方。
税効果会計は、そもそもが見積りの世界の話であったりしますので難解です。「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」をよく理解し、自分の見解を持つくらいにならないと、その判断を間違うことになるでしょう。
「できた」と思っても、次から次へと新しいことが出てきますので、まだまだ精進ですね。
それでは。
難易度 やさしい < ふつう < 少し細かい
難易度は、経理初心者~若手経理ご担当者の方くらいを目安にしています。