【税務】貸倒損失計上の税務リスク Part 3(終) (難易度:少し細かい)
2016年10月6日貸倒損失が調査で否認されない判断のポイント解説Part3です。貸倒損失の解説最終回です。
貸倒損失を計上する税務上のリスクは、「寄付金としてみなされ、貸倒損失自体が否認される」ということ。寄付金は損金不算入ですので、追加課税となります。
このリスクを避けるために、法人税基本通達にあてはめて判断することが大事です。通達は、以下の3つです。
1.債権切捨てのケース(法人税基本通達9-6-1)
2.債権全額が事実上回収不可能なケース(法人税基本通達9-6-2)
3.取引停止等の一定の事実があるケース(法人税基本通達9-6-3)
では、「3.取引停止等の一定の事実があるケース(法人税基本通達9-6-3)」を解説します。
3.取引停止等の一定の事実があるケース(法人税基本通達9-6-3)
◆要件
これ、その他のケースが債権全般の規定であることと異なり、売掛債権に限定しています。
次の事実が発生した場合に、売掛債権から備忘価額(1円など)を控除した金額を貸倒損失としてOK
(1)取引停止後1年以上経過した場合
(2)同一地域の売掛債権の総額がその取立費用に満たない場合
◆会社の経理でやること
貸倒損失として損金経理する必要あり。会計上、貸倒損失計上する必要がある。
◆損金算入時期
取引停止後1年を経過した日以後の事業年度であればいつでも
(最後の弁済期または最後の弁済のときが、取引停止をしたとき以後である場合には、これらのうち最も遅いとき)
◆判断のポイント
これは3つのケースのなかで一番簡単なものですが、売掛債権に限定されていることだけ注意です。
また「(2)同一地域の売掛債権の総額がその取立費用に満たない場合」の取立費用のところ、正しい解釈も必要です。ここでいう取立費用とは、回収のために直接要する旅費、通信費、集金のためのその他費用をいいます。回収を委託する場合には、委託先に支払う手数料等を意味します。その販売・集金にあたる従業員の固定給与等の間接費用は含めません。
あと、間違いやすいのは、取立費用と売掛債権総額の比較は、相手先ごとに行うのではなく、同一地域に存在する取引先の債権合計金額で判断する、ということです。さらに、同一地域とは、同一市町村、同一都道府県など地理的な区分とは必ずしも同じではなく、会社の管理地域区分単位のことをいいますので、会社によって異なります。
以上です。
貸倒損失計上の税務リスクと題して、その判断のポイントをPart1~Part3までで解説してきました。
貸倒損失を計上するのは結構パワーがいるということですね。その原因を作らないというのが一番ですが、もし帳簿上に該当する債権があると思われる場合は、ご参考にして下さい。
それでは。
難易度 やさしい < ふつう < 少し細かい
難易度は、経理初心者~若手経理ご担当者の方くらいを目安にしています。