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【税務】貸倒損失計上の税務リスク Part 1 (難易度:少し細かい)

2016年09月30日

会社の帳簿上に、焦げ付いた貸付金、回収できない売掛金などはないでしょうか?

原因は様々で、資金繰りに厳しい子会社の救済支援での貸付、オーナー企業の役員による「ちょっと拝借」といった現預金の引出し、または、得意先の事情で売掛債権の回収が遅延している、など。

このような債権を帳簿上、いつまでも資産として残していてもしょうがないので、何とかしたい。損金にできて節税できるならばなお良い。ということで「貸倒損失」として税務上消す処理があります。


この「貸倒損失」という処理は、節税の本などで「焦げ付いた売掛債権を回収できない場合、さっとあきらめて貸倒損失計上することで全額の回収はできませんが、その元本×税率分は損金算入できるので、その税金減額効果で少しでも回収したことと同じ効果が得られます!」みたいに紹介されていたりします。

ただし、この貸倒損失の処理は、税務上認めてもらうにはなかなかハードルが高いものです。ここをきちんと理解しておかないと、のちのち高確率で税務調査で否認されてしまいます。

今回は貸倒損失が調査で否認されないよう判断のポイントを解説しようと思います。


まず、貸倒損失を計上する税務上のリスクです。これは「寄付金としてみなされ、貸倒損失自体が否認される」ということ。「寄付金」としてみなされると損金不算入です。

このリスクを避けるために、法人税基本通達にあてはめて判断していきます。通達は、法人税基本通達9-6-1から9-6-3 です。

1.債権切捨てのケース(法人税基本通達9-6-1)

2.債権全額が事実上回収不可能なケース(法人税基本通達9-6-2)

3.取引停止等の一定の事実があるケース(法人税基本通達9-6-3)

この通達ですが、やはり基準ですので、細かいこと書いてなくて、あいまいにできています。


前置きが長くなりましたが、今回Part  1では、「1.債権切捨てのケース」を解説します。

1.債権切捨てのケース(法人税基本通達9-6-1)

要件

次の事実により切り捨てられた金額があれば、貸倒損失としてOK

(1)会社更生法等の規定による更生計画の認可決定

(2)民事再生法の規定による再生計画の認可決定

(3)会社法の規定による特別清算に係る協定の認可

(4)法令の規定によらない関係者の協議決定で次に掲げるもの

①債権者集会の協議決定で債務者の負債整理を定めている

②行政機関等その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議による 契約でその内容が①に準ずる

(5)債務者の債務超過が相当期間継続し、その債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、書面にて明らかにされた債務免除額

会社の経理でやること

経理処理を問わない。何もしていなくても要件さえ満たせば、税務上は強制的に損金算入となりますので注意。

損金算入時期

その事実が発生した日の属する事業年度

判断のポイント

最も重要なのは、

・当該債権放棄がやむを得ず行われるものであること(必要性

・当該債権放棄について相当な理由があること(相当性

ではないでしょうか。この必要性と相当性について、きちんと整理しておく、あるいは文書等で記録しておくのが良いと思います。

 

次に、要件(5)ですが、これがあいまいで分かりにくいので、解説します。

「相当期間」とは、債務者が一時的に業績が悪化したような場合であれば、3年くらいのモニタリング期間が必要といわれています。また、災害の被害などで債務者の取引先が倒産して多額の不良債権を抱えたことによって債務超過に陥ったような場合であれば、3年ではなく短い期間でもよいといわれています。・・・が、要は結構長いモニタリング期間が必要ということです。簡単ではないように感じます。

「弁済を受けることができないと認められる場合」とは、債務者が民事再生、事業閉鎖、行方不明などの事由により、他者から融資を受ける見込みもなく、事業の再興が望めない場合をいいます。もう末期の症状であるということです。

また、債務者の資産・信用の状況、事業の状況、債権者による回収努力等の諸事情に照らして、当該債権が回収不能であることが客観的に明らかな場合もいいます。

先に述べた「相当期間」をモニタリングしてからのこの状況の確認ですから、だいぶ長丁場となり、債権者側も辛いです。

なお、債務者が債務超過であっても損害賠償請求を求めており、係争中である等、回収不能とは未だ言い切れない場合には認められないので注意が必要です。

以上、債権の切捨てケースでしたが、例えば、容易に「書面で債務免除通知を内容証明郵便で出せばいいよ」というものではない、ということですね。きちんとモニタリング期間などを経て、必要性と相当性から貸倒処理しました、というのが大事です。個人的には3年間のモニタリング期間は長すぎで、大体1年超~でもよいかと思います。

 

次回の貸倒損失では、「2.債権全額が事実上回収不可能なケース(法人税基本通達9-6-2)」を解説します。

それでは。

 

難易度 やさしい < ふつう < 少し細かい

難易度は、経理初心者~若手経理ご担当者の方くらいを目安にしています。

 

 

 

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