【労務】2ヵ所以上の会社に勤務する場合の社会保険の具体的な手続(難易度:少し細かい)
2016年05月26日意外にコレ、その具体的な手続きや、具体的なその後の保険料の計算などについて書いてあるものが世の中に少なかったので、簡単に解説いたします。
まず、社会保険(狭義の社保:健保、介護、厚生年金)の簡単な基礎整理から。
社保の加入は、簡単にいうと、従業員が週30時間以上(週3.75日以上)働く場合、法人では強制です。また5人以上従業員を雇う個人事業主(※)でも強制です。
(※)非適用業種(飲食店、理容・美容業、弁護士等の専門サービス業等)では5人以上従業員がいても強制されません。
さて今回は、2ヵ所以上の会社で社保の被保険者に該当することとなった場合の話です。
2ヵ所以上で週30時間以上勤務!! …というよりも、ケースとしては1つの会社の役員で、別の会社でも常勤役員(あるいは常勤従業員)となった場合などがイメージできます。
役員の常勤性は、日本年金機構の解釈にて、定期的な出勤や経常的な労務の提供という観点で総合的に判断しますが、ここでは割愛します。
疑問点は、
2ヵ所分の報酬に対する保険料は誰が支払うのか?
2ヵ所分の報酬に対する保険料の算定はどのようになるのか?
保険証はどうなるのか?
などなど。。。
結論からいうと、
・年金事務所への「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」の提出が必要。
・保険証は世の中に一つ。
・保険料はそれぞれの会社で、その報酬・給料に応じて支払う。それぞれの会社で負担が生じる。
です。
<具体的なフロー>
(前提)
A社の役員が、後にB社の役員も兼任することになり、どちらの会社でも被保険者に該当するケースです。
この方、もともとA社の役員でA社で社保に入り保険証持ってます。A社をメインの会社としたいと考えてます。
A社で月額報酬70万円、B社で新たに月額報酬30万円を受け取ることになるとします。
(フロー)
ステップ1.B社でも、B社管轄の年金事務所に「資格取得届」を提出します。
このとき、A社での報酬額等の情報および二以上勤務予定との記載(備考)が必要となります。
ステップ2.二週間ほどでB社側の保険証が発行されます。
B社側の保険証が手に入りますので、一時的にもともと持っていたA社の保険証とB社の保険証が二つ存在することになります。
ステップ3.メインとして決定したA社管轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。
二以上事業所勤務届には、B社の報酬とA社の報酬の情報等を記載します。B社側の保険証の添付が必要になります。
ステップ4.これにて、国の方で(年金事務所で)自動的に、2社の報酬額を合算したベースで社会保険料を算定してくれます。
ステップ5.そして、その社会保険料は、国の方で自動的に報酬比率などで按分され、按分後の社会保険料としてそれぞれの会社に請求されます。これをそれぞれの会社で納付します。
保険料は、単純に、A社報酬70万円+B社報酬30万円=100万円 を報酬月額として算出される保険料ではないみたいです。
(経理は、最初の月だけは、請求額(月末)が給与支給(25日など)の後にわかることが多いので、概算で仕訳計上するしかないです)
ステップ6.保険証は世の中に一枚です。新たに被保険者整理番号が発行されますので、新しい保険証が発行されます。
もともと持っていたA社保険証と、一時的に取得したB社保険証は不要となります。
以上が、具体的な届出と請求・納付のフローとなります。
保険料は、自己負担と会社負担があり、金額もばかになりません。また手続きも少し煩雑です。
2ヵ所以上の会社で社保の被保険者に該当することのないよう、通常は、非常勤にするなど時間調整するみたいですね。
いずれにしろ、役員を兼任する場合などは被保険者に該当するかどうか、しっかり確認が必要になります。
それでは。
難易度 やさしい < ふつう < 少し細かい
難易度は、経理初心者~若手経理ご担当者の方くらいを目安にしています。